国会リポート 第301号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何が起きているのか解りやすく解説しています。

総 覧

中国北京で行われたTPP閣僚会合、その後のTPP首脳会合を終え、4泊5日の出張から成田に降り立つや、仲間の議員から次々と電話やメールがありました。「本当に解散するんですか?」「本当に選挙になるんですね?」出発前と政治的景色は一変しておりました。

川端康成の代表作・雪国の一節に『国境の長いトンネルを抜けると雪国だった。』という有名な文章がありますが、まさに『(日中)国境の長いトンネルを抜けると解散風が吹き荒れていた。』という状況でした。総理不在中に解散の地合がすっかり出来上がってしまうのも珍しいことですが、この流れは止めようがありません。12月2日公示、14日投票日という日程まで特定する報道が出る有り様。

現在、消費税再引き上げの参考にし、経済情勢を調査する為に有識者・専門家による集中点検会合が開催をされています。消費税再引き上げ延期が既定路線なら何のための開催かと出席者から疑問が出そうですが、総理自身は解散にも消費税再引き上げ延期にも一切言及しておらず、先回り報道が事態を複雑にしています。

18日火曜日に最後の点検会合を終わった後、緊急経済対策の必要性の是非が総理から指示され、その日以降のしかるべき時に消費税再引き上げの判断がなされると思います。仮に引き上げ延期判断が出た場合は衆議院解散と連動すると報じられています。仮にそうなった場合、アベノミクスが失敗したから解散をするというような主張を野党の一部はしていますが、それは全くの間違いです。アベノミクスはトレンドとしてはよい傾向をたどっています。企業収益は数十年ぶりの高業績を上げていますし、雇用情勢も良好です。民主党政権時代は雇用の増加は1万人にとどまりましたが、安倍政権では政権交代後1年9ヶ月で136万人増加をしました。名目所得も上がり始めていますし、株価は政権交代前の9,000円から17,000円を突破しています。設備投資計画も堅調です。

ただ個人消費の回復が想定より遅くなっています。消費税を引き上げるということは個人消費に下振れ圧力を掛けることですから、当然の減少ではありますが、回復力が弱いという原因を分析すれば何をすべきかが見えてきます。企業の売上高利益率は統計を取り始めた1954年以来60年間で最高値を示しています。春の春闘も十数年ぶりに2%を超える賃上げになりました。

しかし、当然のことながら継続的に物価を少し上げていくというデフレ脱却政策に加え、消費税引き上げの物価高が単年度分上乗せになりました。1年だけの賃上げでは物価高に追いついていかない現象、実質賃金のマイナスが起きています。連続した賃上げが見込めないとすると消費者は生活防衛に走ります。大事なことは企業業績の改善が賃金改善に繋がり、それがさらなる企業業績へと繋がっていく「好循環」を起こしていかなければなりません。

19日の政・労・使の会議で二巡目の賃上げを要請していきます。経営者側も好循環の必要性を認識すれば前向きな考え方を示してくれるはずです。この暮れのボーナスも一次集計が経団連によってなされました。5%を上回る上げ幅です。昨年の冬と合わせて一次集計時点で2年連続プラス5%超はバブル期以来20年ぶりのことです。好循環は回り始めています。そのことを実感してもらうために二巡目・三巡目を回し、トリクルダウン(シャンパンタワーの一番上のグラスにシャンパンを注ぎ続けると下のグラスまでやがて回っていく)の速度を上げていくことが必要です。そのことを通じて名目賃金だけではなく物価高を差し引いても手取りが増えていく実質賃金のプラスへと向かわせる必要があります。

3%の引き上げからわずか1年半後に再引き上げをするということが好循環の足を止めてしまわないか、その判断を問わなければなりません。民主党政権時代に民自公で決めた法律を実施するのが安倍政権の担当になっていますが、再引き上げまでの環境整備の時間を必要とするならば法律改正が必要であり、そのことの信任を得なければならないと総理が判断をされるなら解散という決断をされるのであろうと思います。

今週の出来事「本音と建て前?」

予算委員会が終わると、どの閣僚も一様にほっとしますが、総理が出席要請をされる予算委員会の機会は冒頭数日間の総括審議の他には、その時々の特定したテーマに絞り込んで数回開かれる集中審議の時です。今国会最後の集中審議が開催される朝の閣議前に

「あぁ。今日が最後の集中審議か。ちょっとなごり惜しい気もするけど。(笑)」 

なごり惜しい?え~と広辞苑によると・・・。

『二度と会いたくない』の国会用語!?(笑)