国会リポート 第276号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何が起きているのか解りやすく解説しています。

総 覧

衆参予算委員会の基本的質疑が終わり、ほっと一息つけているところです。この国会は消費税引き上げ判断とそれに伴う復興増税前倒し廃止を含めた経済政策パッケージやTPP、加えて国家戦略特区等、アベノミクスに関する審議や、さらには8月に答申の出た社会保障と税一体改革のプログラム法案が質疑の中心になります。その全てに関わっている大臣として与野党の集中砲火を浴びると覚悟して臨みました。

案の定、予算委員会では総理に次ぐ答弁回数となりましたが、比較的落ち着いた議論ができました。衆参選挙の結果もたらされたねじれの解消は心強いもので殺伐とした雰囲気は一変した感があります。落ち着いた議論環境が整ってきたと思います。

このところ株価が1万4000円台で上がり下がりを繰り返しています。どうしても1万4800円の壁が立ちはだかっています。アベノミクスの一の矢、二の矢は極めて具体的であり、効果もリニア(直線的)に効いてきましたが、第三の矢たる成長戦略を具体的成長の姿に描きづらいこともあってアベノミクスの一抹の不透明感を市場が体現しているのかもしれません。その点、国家戦略特区では具体的なビジネスプランが形になっていきます。世界に冠たる国際都市の形成、ライフサイエンスのビジネス拠点、農産品輸出のビジネス拠点等々、いくつかの政策テーマが検討されています。公募による規制緩和項目のうち主なものは16項目でそれに関し、各省調整が終わりましたが、国家戦略特区法案が成立後もいい規制改革案が追加提言されれば採択をする方向です。合わせてそれらのビジネスプランに資金供給を円滑にする仕組みも整備されていきます。

加えて注目される試みとしては「企業実証特例制度」です。あるビジネスプランを進めていく際に障害となっている規制があった場合、それに代わる安全措置を企業が構築できればその規制を外していくというものです。つまり企業側の規制改革プランに政府がお墨付きを与えるものです。またグレーゾーン解消制度も注目されて然るべきです。ビジネスを進めていく際に規制に抵触するか否か不透明な部分について問い合わせを受ければ行政が回答をしなければならない制度で、投資をする際の予見可能性が高まります。

国家戦略特区に関し、私が何より大事だと思うことは集積した企業群、研究施設群と大学や国、地方自治体間のコーディネート機能です。オランダのフードバレーやデンマークのメディコンバレーを例に取っても、自然発生的に集積した官民の研究施設群がコーディネート機関が出来た途端に飛躍的発展を遂げたという点です。

国家戦略特区は日本経済をオールジャパンで牽引をしていく大規模なビジネスプランですが、第三の矢である成長戦略の具体化に資すると思います。国家が産業の方向性を特定すべきではないという批判をしばしば耳にしますが、アベノミクスの成長戦略は日本が抱えている社会課題を成長のフロンティアにしてしまおうという作戦です。少子高齢化の中からそれに対処する産業群や制度を産み出し、インフラの一斉老朽化の中からそれに対処する産業群やシステムを産み出し、農業人口と農地の長期減少と荒廃からそれに対処するシステムを産み出し、フロンティアとしていく。つまり、日本が抱える社会的課題に関するソリューションを「拓くべきフロンティア」としたものがアベノミクスの成長戦略なのです。定見もなく単発技術を産業として並べただけのものではありません。そして、今抱えている日本の社会的課題は明日世界が抱える社会課題なのです。

 

今週の出来事「アマリノミクス?」

朝夕の冷え込みは、夏が過ぎたら冬が来た、と思うほどですが、それにつれて閣僚もネクタイ装着派が大多数になりました。閣内では官房長官と経産大臣がいまだクールビズですが、だらしがないと抗議の電話が入るそうです。

しかし本当は彼らが正しくて10月末までがクールビズ期間と定められています。一方真夏でもネクタイを締め続けたフォーマル派は麻生副総理と古屋大臣の二人でした。

「麻生大臣はスタイリッシュだから寝る時もパジャマにネクタイ締めてるんですよね。」

冗談で言ったら、

「うん。だから女房にネクタイで首を締められる夢を時々見るんだ。」

と返されました。

夏に京都で講演をした際、

「クールビズのおかげでネクタイ業界は大変です」

と苦言を呈され、後日クールビズ用のネクタイなるものが送られてきました。

この分だと夏場にノー上着運動を提案するとクールビズ用のジャケットが送られてくるんじゃないかな?よし!成長戦略で提案しよう。(冗談です(笑)。)