国会リポート 第248号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何がおきているのか解りやすく解説しています。

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「挫折を経験して安倍さんは一皮むけましたね。一回り大きくなったような気がします。」

週末、地元に帰ると支持者から掛けられた言葉です。優しさが増し、それでいてそれがたくましさに繋がっている。私が最近漠然と感じていた思いを地元の有権者は、テレビ討論を視聴して見事な表現をしてくれました。

安倍氏にとって総理在任中に志半ばで病に倒れたということは人生最大の挫折でありました。

2年前に新薬が開発されたということもありますが、挫折と向き合い、これを乗り越える努力は逞しさと共に相手を思いやる優しさを倍増させたと思います。

私は挫折を知らない政治家は信用しないことにしています。そして挫折を乗り越えようとしない政治家も頼りにしないことにしています。

人は挫折を経験することによって人の痛みを知ることになります。政治家はサイレントマジョリティにどれだけ敏感になれるかが要です。

昔、中選挙区時代、あるベテラン市長がいました。私が市長室を訪れると、市政にクレームを付けに来た方々が帰った後でした。「市長室に色々と言ってこられる方があって、大変ですね。」と言うと、「甘利先生。私の所には些細なことで文句を言ってくる人はたくさんいます。その一方で、一度も市長室に来ることもなく、黙々と納税をし、市政を支えてくださる方もたくさんいます。私はそういう人たちの声にこそ耳を傾けたいのです。」

たくさんの市長と接触してきた中で、私が一番感銘を覚えた言葉です。

声に出さない、声に出せないサイレントマジョリティの痛みを敏感に感じ取る能力こそ政治家が磨くべき感覚です。そしてそれは自身が惨めな思いを経験することによって磨かれると思います。

その上でその惨めさを克服し、逞しさへと結びつけていって初めて信頼される政治家となります。

地元の支持者が肌感覚で感じ取った安倍氏の変化はまさに的を射た表現だったと思います。

さらに私が安倍氏を推薦する理由は国難の日本にあって最適の人物だと思うからです。政権交代して 3年、日本の外交や安全保障はブレまくり、今や日本自身が東アジアの不安定要因となりつつあります。

お家芸の経済は昨年 31年ぶりの貿易赤字に陥り、数年後には経常赤字すら懸念されています。

日本に残されている時間はそう長くはありません。この国難の日本にあってリーダーとして必須の要件は 2点です。ひとつは危機管理能力、そしてもうひとつは国家統治能力です。

防衛上の危機管理は中国・韓国等とどう向かい合うかです。強気一辺倒で行くならば、戦争を覚悟しなければなりません。弱気になれば、足下を見透かされます。

危機管理とは硬軟あらゆる手法を使い、したたかに国益を守りきることです。これはいくら本を読んでも身につく能力ではありません。危機管理の司令塔、総理官邸でどれくらいそのケースに直面したかの経験値です。

そして統治能力とは、官僚機構をグリップし、縦横無尽に使いきる能力です。

民主党政権の不幸は政治主導を曲解し、官僚機構と対決し、頓挫したままで終わってしまったことです。

統治能力においても安倍氏は他候補に抜きん出ています。要するに日本が平時であるならばニューフェイスでも十分にやっていけると思いますが、今は国難の時なのです。

一日でも早くアマチュアからプロフェッショナルの手に政治を取り戻すこと。そしてそのリーダーは危機管理能力と国家統治能力に長けている者を充てること。これが日本再起への唯一の道なのです。

 

今週の出来事「やな渡世だなぁ(座頭市?)」

 

「私の渡世 (世の中の生き方) の考え方からすれば、考えられない行為だ。」

女房役の幹事長が総裁に反旗を翻した事に対する麻生元総理の批判が波紋を呼んでいます。

石原幹事長は、当分「平成の明智光秀」の称号に悩まされそうです。

うーん、我が家の女房役は大丈夫かなぁ。この間俺の生命保険の額聞いてたけど…。夕飯の時、熟年離婚の話題なんか出されるとドキッとしません?

そういえば、奥方に先立たれた亭主はすぐにボケるけど、ご主人に先立たれた奥さんは若返るんだって。