国会リポート 第241号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何がおきているのか解りやすく解説しています。

総 覧

かねてからの私の主張どおり、税と社会保障の一体改革は、当面の課題だけ切り離して与野党間で合意形成に向けて協議し、他の民主党マニフェストに関わる部分は第三者機関の協議に委ね、今国会中に採決できるような環境を整備するという方向になりそうです。あわせて、「経済のパイを大きくし国民の所得を増やすための成長戦略を提案せよ。」という私の主張も共感を得つつあります。

このリポートでもお伝えし、自民党役員会でもたびたび主張してきました私の考えは、現在の社会保障給付が赤字国債の発行で賄われているという異常事態に決別をするためには、消費税の引き上げと同時に給付のばら撒きを見直していかなければならないという事です。

税を引き上げる代わりにさらなる飴をばら撒くという民主党のポピュリズムは、即刻消費税の再引き上げへと向かって行きます。年金・医療・介護の連携を検証し、IT 化を進めることで無駄を省き効率を上げ、消費税引き上げの効果が長続きしないと、人口減少の中で高齢化比率が進んでいくために際限なく消費税を上げていくというジレンマに陥り兼ねません。

私が、あわせて経済のパイを大きくする必要性を説いているのは、消費税収が経済成長と極めてリンクしているからです。

小沢一郎氏やその周辺が主張している「その前にやる事がある」という詭弁は、やらない事に対する単なるアリバイ作りにしか見えません。

行革は、ここまでできたから良いというものではなく、時代時代によって評価が変わってくる無駄の認定と削減は未来永劫止まる事のない日々取り組んでいく課題だからであります。一言で言えば「行革が終わってから社会保障と税の一体改革を行う」のではなく「行革を進めながら社会保障と税と経済成長の三位一体改革を行う」という事です。

さて、政府はようやく関西電力大飯原発3・4号機の定期点検合格後の再稼動を指示しました。企業関係者や医療関係者はホッとしているところだと思いますが、決して油断はできません。

他電力会社から融通してもらい、加えて自電力会社管内の節電を呼びかけても予備率 (需要のピーク時の余裕度) が 3%では、安全の目安とされる 8% - 10%をはるかに下回っています。昨年も火力発電所が一基も故障せず、フル稼動した日はわずかしかありません。昨年のデータをそっくり当てはめれば、需要のピーク時に火力発電所故障のピークがぶつかってしまった場合には予備率を突破する計算になります。その場合は変電所自動閉鎖の連鎖が起き、ブラックアウトのリスクが生じます。

電力不足のため、古い火力発電所に応急処置を施し、尚かつ、他の火力発電所も定期点検期間を引き伸ばし、綱渡りの電力供給をしているのが実情です。

『安全が確認された原発だけ動かす。』具体的に言えば、1000年に一度の災害が、その原発の近隣でもう一度起きても事故に至らない事が確認をされた原発のみ動かす、という大前提に対して政治判断が二転三転し、挙句の果てには安全を政治家が判断するかのような誤解を国民に与えてしまった事に、最大の問題があります。

1000年に一度の災害が起きた時に、どう対処し、具体的な改良作業は何が必要か、施工後はそれが技術者によってどう確認されたか、ひとえに技術的判断をする事です。技術者でない政治家が安全を確認するかのような誤解は人々に不安と不信を与えるだけです。

原発停止による海外への燃料費の追加支払いが年間 4兆円近くになろうとしている現状に、政治家はもっと真剣に向かい合わなければなりません。

今年中にすべての電力会社が内部留保を食いつぶし、やがて債務超過に陥ります。放っておけばその先に倒産という事態が発生し、原発の面倒をみる者がいなくなります。原発は、停止したから安全だという訳ではないという事を肝に銘じ、情緒論に走らない議論が必要です。

 

今週の出来事「情報は当選の母?」

 

イタリアのスーパーカー「フェラーリ」をデザインしたただ 1人の日本人デザイナー奥山清行氏と JR 東日本会長との 3人で懇談しました。東北新幹線に投入される新型車両は奥山氏のデザインによるものです。

世界的工業デザイナー奥山さんの言によれば、「日本のもの作りの力が落ちて来ている原因は、営業の情報が開発の現場に伝わっていかない事にあります。営業はユーザーの製品評価と直接接触しますので、その情報が製品開発の現場に届く事が、よりユーザーのニーズに合った競争力のある製品へと繋がっていくからです。」というものでした。

確かに、政治家も選挙区の情報をいかに把握しているかが選挙の強弱 (競争力) だもんな。

…あっ!地元秘書との定例ミーティング、ここのところ出られてないや!

甘利事務所の競争力、落ちてるなぁ (苦笑)