国会リポート 第238号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何がおきているのか解りやすく解説しています。

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東京地裁が小沢一郎元民主党代表の政治資金疑惑に無罪判決を下しました。

司法関係者から、裁判所が物的証拠を採用しない時点で有罪は難しいとの観測は流れておりましたので意外性はありませんでしたが、限りなくグレーというのが国民の受け止め方だと思います。

「有罪を確定できる証拠がない」という判決は、民主党内にも複雑な思いで受け止められています。

有罪であったなら小沢派は 110人から 30人以下に縮小したであろうし、野田総理は小沢氏との決別を決断しやすかったと思います。その対応如何によっては野田内閣や民主党の支持率もあがっていたでありましょう。

無罪判決によって小沢氏は党内で力を取り戻し、野田降ろしを加速させる事は明白です。連休明けに消費税法案の審議が始まりますが、「政治生命を賭ける」としている野田総理の覚悟が『本物』か『メッキ』かがはっきりしてきます。

歴史に名を残さんとする覚悟が野田総理にあるなら、小沢氏を中心とする消費税反対派の制止を振り切っても自民党と組んで、社会保障と税の一体改革を成立をさせると思います。

もちろん自民党は政府の法案に乗るわけではなく、今後提出する自民党の対案に政府側が乗るという形にはなります。成立した際には、そこで信を問うという可能性もあります。

ただ、言葉の歯切れは良いのですが、態度の歯切れが極めて悪い野田総理がそこまで腹をくくっているとは到底思えません。小沢元代表の迫力と輿石幹事長の仲介策に乗ってずるずると何もできないまま時を重ねていくと思います。そうなった時には野田総理の再選はありません。小沢氏の意に沿う政権が出来るか、小沢氏自身が代表選に挑戦するかのどちらかです。

さて、例年になく寒い春が過ぎたと思えば、いきなり初夏に突入しそうな天候です。春が寒かった分だけその反動で夏は暑くなるのではないかと心配しています。

間もなく、原発 54基のうち最後の 1基が停止いたします。平年並みの暑さの去年でも原発は 17基動いていましたし、産業界も土日操業・平日休みという異例のシフトを敷いて乗り切りました。

猛暑が予想される今年は 1基も稼動しない恐れもあります。労働界からは昨年のような対応は限界という反応が出ており、輪番停電が現実の物となりつつあります。

エアコンが使えず、熱中症による犠牲者の続出や病院の生命維持装置への電力供給不安を考えると中・長期的に再生可能エネルギーを推進していく事は当然の事としても、国民生活や国民経済の安定を確保していくために時間軸のエネルギー安定供給設計が必要です。

今そこにある危機を乗り切るためには、政府がポピュリズムに陥ってしまってはいけないのです。

私は、数年前より宇宙太陽光発電推進議員連盟の会長をし、究極の自然エネルギーの推進をしております。

大型ロケットで太陽光パネルと送電装置を宇宙空間に打ち上げ、1基 100万キロワットの安定した宇宙太陽光のエネルギーをマイクロウェーブで地上に送るという壮大なプランです。

技術的には現在でも可能ですが、原発1基に相当する 100万キロワットの装置を作るのに 3兆円のコストがかかります。原発 1基が 4千億円ですから、コストダウンには相当な時間が必要です。

今の政権に最も欠けているのは、時間軸によるエネルギーポートフォリオの作成です。こういう風になれば良いなという希望的観測を現実のプランとして語るところから悲劇は始まっています。

 

今週の出来事「顔面蒼白?」

 

ドイツ CDU の長老議員リーゼンフーバー氏が、昨年に引き続き今年も私に面会を求めてきました。

ドイツは太陽光や風力の成功モデルと世間ではもてはやされていますが、その当事者が「ドイツの失敗に学んで欲しい。」と言うもんですから何かと思えば「買取価格設定を事業者寄りにしすぎてしまって国や家計の負担が深刻だ。」との事でした。

また、安定的な風は人口の少ない北部に吹いており、そこに風力発電所を建設すると、高圧線で南部に持ってくる際に通る予定地域の反対運動にあって難航しており、洋上風力発電に至っては、完成後に送電線が引けず電気が送られて来ないのに金だけ払うという事態になりそうだ、との事。

隣の芝生は青く見えるというけど、現実はそんなに甘くないんですね。野田政権は隣から見ても青く見えないけどね…。

あっ!青くなってる事は事実か (笑)