国会リポート 第229号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何がおきているのか解りやすく解説しています。

総 覧

北朝鮮の金正日総書記が突然死去いたしました。死亡から 2日後の公表は先進国であれば異常な遅さですが、後継体制の整っていない独裁国家では異例に早い公表であり、葬儀委員会のメンバーの速やかな発表等、大事件の割にはいかにも段取りが良すぎる不自然さが多々あります。北朝鮮労働党御用達の女性アナウンサーがここ暫くカメラの前に姿を現さなかった事と相俟って死亡日時はもっと以前であったのではとの憶測も呼んでいます。

独裁国家の指導者の交代時には、新指導者の求心力を示す威嚇行為・難民の流出の懸念等、いろいろと不測の事態が予想される為、隣国韓国は緊急警戒体制に入っています。

中国では異例な早さで胡錦涛主席が習近平副主席等を同道し北京の北朝鮮大使館に弔問に訪れ、金正恩副委員長を後継者として支える声明を発したと伝えられましたが、北朝鮮が不安定になれば難民流出に対する対処を真っ先に迫られるのは中国であるだけに、今の政治体制が安定したまま経済開発に取り組んで行って欲しいというのが中国の本音だと思います。さらに、TPP等、中国包囲網と誤解される報道の中で、緩衝地帯 (buffer zone) としての地政学的位置付けとしても北朝鮮を重要視しているものと思われます。

山岡賢次国家公安委員長が地元選挙区に帰っており、緊急招集された安全保障会議に欠席したと報じられました。

内閣の要諦は危機管理にあります。私の記憶によれば、官房長官は特別な場合を除いて日曜・祭日でも官邸の近くに待機していなければならず、防衛大臣と国家公安委員長はそれに順じ土・日以外は必ず、直ちに役所に駆けつける事のできるところにいなければならない、となっているはずです。

私自身、閣僚当時、金曜の夜に地元に帰ると日曜の夜のうちに必ず上京しておりました。国家公安委員長経験者にその事を尋ねると、平日は 15分以内に官邸に駆けつけられる位置にいる事、という縛りがかかっているとの事でした。月曜日に国家公安委員長が選挙区の行事に出るなどという事は有り得ないのです。

もっとも、総理自身が昼に緊急放送があるという事を知りながら街頭演説に出かけてしまうぐらいですから。

党大会の前日、1月 21日 (土) 午後から党本部におきまして、2つのワークショップが開かれます。来るべき衆議院選挙に向けての 2二本柱、国家の強靭化と経済の再生です。私が担当する『日本経済再生』については、マスコミに度々登場している (株) 経営共創基盤の冨山和彦代表に私と共にパネリストになって頂く承諾を頂きました。先約があったのを調整して頂いた様で恐縮です。

ここでは、失われた 20年の日本を振り返り、デフレから脱却できなかった真の原因はどこにあるのか、 史上最高値を更新する円高、攻めの空洞化ならぬ守りの空洞化、日本国債が暴落する X デーとそれに備えた処方箋等、幾多の人がトライして処方箋が描けなかった日本の根本問題に切り込んでいきたいと思っています。インターネットで同時中継しますので、注目して頂きたいと思います。

先日、立川談志師匠のお別れの会がありました。政界からは親交のあった数名だけでしたが、私が思い出すのは労働大臣時代に、広報紙の対談相手に立川談志師匠を選んだ時の事です。

やめた方が良いのでは?と心配する役所の反対を押し切って行いましたが、テント暮らしのホームレスの対策から入った途端「あの連中は料亭の残飯ばっかり食ってるから糖尿病が多いらしいなぁ。」と役所の心配した通りのスタートになりましたが、終わって編集してみると中々の物になりました。

 

今週の出来事「ケンカは止めて!」

 

「これ、先生にサプライズのクリスマスプレゼントです!」

議員会館に鳩山邦夫夫人のエミリーさんが、私の肖像画の陶板画を持って突然現れました。1年前、私の秘書に、内緒で私の写真を所望したとの事でした。

鳩山夫人とは皇居の晩餐会等で隣席する機会があり、その際、陶芸論議に花が咲きました。すでにプロの陶芸絵付師である鳩山夫人は、あちこちで生徒を指導しているという事なので、出来映えはプロのそれです。

会館にかけた時期が金正日総書記の死去と前後したものですから、来客者が「あの金正日総書記みたいな額は誰が描かれたんですか?」と一様に尋ねます。

『…そばに献花なんかしないでね (笑)』