国会リポート 第227号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何がおきているのか解りやすく解説しています。

総 覧

ギリシャ発の財政金融危機は EU 第三の経済大国イタリアまで巻き込み、国債発行を継続できる限界利息7%を突破しようとしています。

EU 最高の財政健全国であり、『世界一の』といっても良いドイツの発行する新規国債が予定量をさばけない札割れを起こしました。EU の総力を挙げてというより、G20 の総力を挙げて沈静化を図らなければなりません。

昨日まで優良評価であった国債が、不安の連鎖により突如市場の評価を下げるというところが現代社会の怖さです。

ギリシャの国債は 30%の利付けを市場より要求され、事実上販売不能です。イタリアは 7%、世界最優良国のドイツは 2%である中で、日本の国債は 1%以下です。つまり、世界最高の信用度を今日の時点では持っているわけです。経済規模に占める借金の総量、経常黒字の量等、すべての指標で日本よりドイツの方がはるかに健全であるにも関わらず、日本の国債の信用度はドイツの上をいっています。

しかし、実情は極めて危険な状態で、「今のところは」というだけです。市場の評価は「日本の国債は大丈夫だ。半年以内はね。」つまり、来年は分からないけど今日明日は大丈夫だという評価です。

そこで外国投資家は緊急避難策として日本の国債を買っているだけで、ほとんど 1年以内の短期国債でいつでも逃げ出せる準備をとっています。なぜ日本の国債が優良評価をされているかといえば、そのほとんどが国内でさばけているため、売り浴びせられる危険性が低いというところにあります。

景気見通しが不透明であるため、個人も企業も消費や投資に内向きになり防衛的になります。可処分所得の伸びない中で貯蓄や内部留保が増えつつあるのがこれを物語っています。それらの資金は、金融市場を通じて国債に向かいます。つまりデフレ経済が国債の信用を支えているという構図になります。

デフレを脱却するためには個人が所得をより多く消費に回し、企業が内部留保を投資に向わせる事が必要です。そういうマインドを起こさせる方法はただ一つ、政府が希望に満ちた力強い成長戦略をしっかりと提示する事です。

ここで問題になるのは、デフレを脱却すると国債に向っていた資金が投資や消費に向かう事になり、国債を支える資金が不足いたします。すると、国外資本で消化せざるを得なくなり、金利リスクが急激に上がります。それを押さえ込んでいくためには最悪の財政状況にある日本が財政再建の毅然たる姿勢を示す事しかありません。増え続ける社会保障費を赤字国債で賄う体制を脱却しなければその評価は得られません。そこで消費税引き上げと向かい合わなければならないタイムリミットが迫っているというわけです。

年内にも政府は成長戦略を提示すると表明しておりますが、中身が明らかになるにつれて、財務省主導の極めてしみったれた内容になりそうです。

最大の目玉は被災地の市町村を細かく指定して経済特区とし、新規にその対象市町村に新しい会社を設立した企業には法人税を 5年間免除するというものでありますが、中身を詰めていくと、法人税分を 5年間積んでおき 5年後に再投資をした時にのみ、その分が初めて免税になるというものですが、再投資する場所は最初に投資した市町村内に限られるという制約を内緒でかけているようです。

極めて使いづらい方式であり、何とか税のとりっぱぐれを避けたいという財務省の筋書きに沿っているような特区です。実効性のある本物の成長戦略とそれを具体的に実現していくための綿密な処方箋が必要です。

私が立ち上げた政策集団「「さいこう日本」は、まさにそれをやるためのチームです。

 

今週の出来事「来年はヘルメット姿?

 

先月、党の広報本部長に就任いたしましたが、私なりの感性で色々な改革に取り組んでいます。

毎年暮れに総裁の写真入の一枚物カレンダーを発売いたします。1万枚刷りますが、固定ファンがいらっしゃるので常に完売しています。ただし、総裁の顔がアップで載っているだけのダサいカレンダーでした。

今年は谷垣総裁らしくスポーツ自転車の脇にカジュアルウェアで立っている爽やかな写真にしました。女性には特に好評です。

谷垣「半袖姿だと寒そうじゃない?」

甘利「年中冬じゃありませんから。」

谷垣「3~4年前の写真だから、髪も濃かった気がするなぁ。」

…年末までもたせて下さいね (笑) (総裁、スミマセン。)