国会リポート 第217号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何がおきているのか解りやすく解説しています。

総 覧

「さいこう日本」第2回目の講師は、外交評論家の岡本行夫氏に務めていただきました。

岡本氏は、今アメリカが最も信頼している有識者の 1人で、橋本内閣の時に沖縄担当の総理補佐官を務めました。私とは外務省北米一課長の時からの付き合いで、ときどき話を聞かせてもらっています。

エネルギー問題や外交・安全保障に関わる私の危機感は岡本氏と共通するもので、講演を通じても沈み行く日本に危機感を共有いたしました。

最近の国際会議では、中国の話題が 50回出ればインドの話題は 20回、韓国の話題が数回で日本の話題はゼロ。国際社会の中からほとんど日本への関心がなくなっている、という話はごく最近別の識者からも聞いたところでありました。

「沖縄に駐留する在日米軍海兵隊の普天間から名護市辺野古への移転はほぼ不可能になった。」との岡本氏からの言葉は、橋本内閣時代、沖縄に泊り込み連日連夜この問題の解決に取り組んできた人の言葉だけに重みがありました。

「最低でも県外」と、あてもなく思いつきで選挙のウケ狙いで発言した鳩山前総理および民主党の軽率な行動は、今後日本の外交と安全保障に計り知れない重荷となってのしかかってきます。

中国の空母は間もなく完成しますが、同時に原子力型を含む 60隻の潜水艦隊が東シナ海から南シナ海を席捲いたします。中国が国是としている安全保障の理念は、力の空白が生まれれば自国の軍によって速やかにそれを埋めるというものです。

米軍のプレゼンス (存在) が希薄になったところは中国軍で埋めていく。つまり、アメリカが引いた分だけ中国が出張っていくという考え方です。やがて、南シナ海から東シナ海への航行の自由は奪われ、それどころか小笠原諸島からグァム・サイパンへの第二列島線まで中国海軍の支配下に置かれます。

韓国、ベトナム、インドネシア、フィリピン等々 ASEAN 各国は甚大なる危機感を抱き、海軍力を増強させています。

今後の日中関係は緊張感が高まる事はあれ、減る事はありません。まず政権はこの覚悟をして臨むことが至上命題です。

民主党政権はアメリカの比重を減らして中国へ、という政策を取りました。

東日本大震災では中国から災害救助隊が派遣された事はもちろん感謝しますが、15名程度で一週間程度でした。

アメリカは「トモダチ作戦」のもとに、大オペレーションを展開し、2万人を極めて長期間派遣してくれました。女性兵士が泥まみれになりながら遺体捜索や瓦礫処理に汗をかいてくれたことも記憶に新しいことです。

本当に頼りにすべきはどこか。この機会にもう一度考えてもらいたいと思います。

かつて、フィリピンでもスービック基地から米軍に引き上げてもらうよう国民運動が起こりました。米軍が引き上げるや、フィリピンが領有権を主張していた南沙諸島はあっという間に中国海軍に占領され基地まで作られてしまいました。

いまフィリピンは、政策の誤りを反省し米軍との関係を再構築しようとしていますが、失われた代償は余りにも大きいものでした。

私は日中友好議員連盟の副会長をしておりますが、心すべきは中国との友好は無防備で構築できる物ではなく、左手で拳を握りながら右手で握手をするという姿勢が極めて大事なのです。

かつて自民党が公約に掲げ、3月上旬に閣議決定された「新エネルギー買取法案」に 3ヶ月間無関心で居ながら、ソフトバンクの孫社長が自分の商売にしたいと持ち込むや「この法案は私の信念です」と、突然高揚する菅総理を見るに付け、この人の信念とはウケ狙いの思いつきでしかないと確信しました。

 

今週の出来事「愛国者?

 

被災地の気仙沼に入った時に、その場で解決できることは現場から本省と連絡を取りつつ解決をするという姿勢で臨みました。未処理案件のみ宿題として持ち帰り後日回答を約束しました。

その 1つが避難所から出ていた蚊帳の支援です。瓦礫・ヘドロ対策が遅れている分、蚊の大発生が懸念されます。経団連会長・住友化学米倉会長と直談判し、支援の約束を取り付けました。

ところが後日、海外で作っている同社の蚊帳はマラリア対策のための薬が練りこまれているため薬事法違反で日本には持ち込めない事が判明しました。

う~ん、そう蚊…。

俺の努力も蚊帳の外?(苦笑)