国会リポート 第214号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何がおきているのか解りやすく解説しています。

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政府から副大臣や政務官をさらに増やす法案が提出されました。

いま政府にお願いしたい事は、部下 (官僚機構) を信頼して組織的な動きを早く始めて欲しいという点に尽きます。5兆円もの人件費を払って設置してある官僚機構には、数十年にわたるデータやノウハウが蓄積しています。

政治は、具体的な目標を期限を設けて設定し、その実施については官僚機構に "丸投げ" し、問題が起きたら政治的に調整をする。そのために、事案が暗礁に乗り上げたら即刻フィードバックせよ、と指示を出しさえすれば良いのです。

省庁間調整が暗礁に乗り上げた時、予算措置が必要な時等、それぞれの行政機構だけで処理できなくなった時に速やかに政治判断を求めるというシステムが機能する事が必要なのです。

政治主導ごっこにとらわれ、箸の上げ下げまで政務三役 (大臣・副大臣・政務官) の許可を得なければできないという体制が、官僚の英知もノウハウも過去の経験も、そして連携もすべて封じてしまっています。官僚を信頼する事は、何ら政治主導に反する事ではありません。

阪神淡路大震災のときは、社会党 (現社民党) 村山総理の内閣でした。連立を組んでいた自民党に対し、「自分は経験不足だから、自民党がその指揮を執ってくれ」と村山総理は謙虚に河野洋平自民党総裁に要請しました。

直ちに小里貞利震災担当大臣が任命され、小里大臣は村山総理に「一切の権限を私に一元化して頂けますか?スタッフの人事権も一任して頂けるでしょうか?そして、必要な予算についても私の要望を取り入れて頂けますか?」と要請し、村山総理はすべてに快諾し、小里担当大臣の下に一斉に復旧・復興の動きが始まりました。小里大臣は官僚機構をフル稼働させ、問題が起きたときのみ政治主導で判断を下しました。

ひるがえって今回、菅総理から自民党に対して、震災復興担当大臣をとの要請が思いつきのように何度か発せられました。その都度、「権限はどうなっているのか」と問い合わせる自民党に対して明確な返事は返ってきません。権限は渡さないけど責任だけ取ってくれ、というような事態になれば、何より被災者が不幸になるだけです。

先般、政府が提出した『復興基本法』に対し自民党は対案を提出いたしました。

復興再生院に権限を一元化し指揮命令系統を明確にし、復興再生のスピードを早め実を挙げるというものです。どうやら政府は自民党案を丸飲みするという事のようですが、ならば新しい体制は新しいリーダーの下でという事で不信任案が提出される運びとなりそうです。

民主党は衆議院で不信任案が可決されるに必要な 75票を超える署名者を集めたと聞いていますが、恐らく本当に腹の固まっている人は半分も居ないでしょう。しかしそれでも民主党内から総理を否定する者が出るという事が重大な意味を持ちます。

さて、先般発表された今年 1~3月の経済成長の速報値は、マイナス 0.9%でした。年率換算すればマイナス 3.7%の成長下落という事になります。

一刻も早く復興の需要を喚起する事、そして日本全体での経済成長戦略を描いていく事、そのためには電力の安定供給に一刻も早くメドをつける事。

年率 3%以上の経済成長をしなければ財政再建のメドは立たず、毎年 1兆円を超える社会保障予算の増加にも対処はできません。

「節約政策で昔の生活に戻れば良いだけ」などと言っている人が居ますが、経済成長しなければ昔の生活にすら戻れないという事を銘記すべきです。

 

今週の出来事「画竜点睛?

 

イタリアのペトローネ大使から、ザッケローニ氏の日本代表監督就任のお祝い会を開くので日本イタリア友好議員連盟会長としてぜひ出席して欲しい、という要請がありました。数名で小ぢんまりとするのかと思いきや、何と 300人超の大立食パーティ。

大使は挨拶の中で私の名前を出してくれましたが、ザッケローニ監督の前には長蛇の列。一緒に来ていた議連幹事長の林幹雄代議士と

「話しが違うじゃん (笑)。近くに寄る事もできないよ。」

「隣の部屋の飯には早めに並んでおいた方がいいですね。」

立食の部屋には一番乗りできたんですが、お目当てのパスタ類がどこにもありません。仕方ないので宿舎に帰ってレトルトカレーを食べました。

今度、大使を寿司屋に招待してあげよ。

…マグロ抜きかな? (笑)。