国会リポート 第205号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何がおきているのか解りやすく解説しています。

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いよいよ通常国会が開幕いたします。

開会前に小沢一郎元民主党代表の政治倫理審査会における審査が予定されていたところですが、本人は出席の意向を示さない模様です。本人が出ない会議を議決しても無意味という事で、自民・公明は強制力のある証人喚問を主張しています。主張する我々もいささかゲンナリしてきましたが、万事に結論の出ない民主党政権には言葉もありません。

各省庁関係者の最大の悩みは、この政権は万事につけて物事が決まらないという事です。仕方なく官僚が複数の選択肢を示し、その中から一本に絞った理由を示して了解を求めるというスタイルになってしまい、『政治主導とはどこの国の話?』という状態です。

ひるがえって自民党に求められるのは、反対のための反対のかつての民主党になってしまうな、という点に尽きると思います。

昨年も自民党は政府案に反対する時には必ず対案を出してきました。しかしながら今ひとつ、その点が国民の皆様に伝わらず、不毛の対立のみ映ったようであります。今年は『建設的提言をする』責任政党のイメージを定着させるべく全力を挙げたいと思います。

喫緊の課題は、景気回復です。スイスの国際経営開発研究所 (IMD) が発表する国際競争力ランキングで、政権交代後の日本が 17位から 27位まで一挙に 10ランクも順位を落としたという事は猛省すべき事でありますが、逆にその原因を探れば日本の競争力を上げるヒントにもなるはずです。

まず第一は日本の行政機構の IT 化の遅れです。熟慮断行という言葉がありますが、「正しい結論を迅速に出す」という事が企業経営同様、国家経営でも競争力の源になります。ブロードバンド等、IT インフラは世界トップランクであるのに、行政の IT 化は遅れをとっています。

第二に日本の強みを分析する事です。経済大国日本は、世界第二の地位を昨年中国に奪われましたが、経済の強みが外交や安全保障を支えているという事を再認識すべきです。研究開発やサービス開発をする力をつける。ブランド力を高める力をつける。世界標準を主導する戦略をたてる。日本の強みをブラッシュアップし、世界標準とする戦略をしっかりと立てるべきです。

2005年のグレン・イーグルスサミットに向けて私が提案した「模倣品・海賊版撲滅のための国際条約」は 1~2年で発効いたします。政府を挙げて引き続き競争力向上のための環境整備をすべきです。

第三はアジア・太平洋戦略です。4年前、元国防副長官・ハムレ所長率いる米戦略研究所の一行が私を訪問しました (小泉進次郎代議士も当時その研究所の一員として同行されました)。その際私は「20世紀のアメリカは大西洋国家。21世紀のアメリカは太平洋国家にならなければ、アメリカと言えども世界の発展から取り残される。そのためには日本から ASEAN を経て、インドに繋がるパートナーシップラインを築くべきだ。」と進言いたしました。すかさず、マイケル・グリーン日本部長は「まったく同感です。」と応えました。

賛否渦巻く TPP もそういう視点からも検討すべきだと思います。

第四は財源も含めた社会保障の将来にわたる安定的制度の構築を図るべきです。消費税を 10%に引き上げ、これを社会保障の財源として法律的に位置付け、医療・年金・介護の安心を培うという事はすでにマニフェストに示しておりますが、単純に民主党の呼びかけに乗れないのは、民主党が 16.8兆 (フル稼働すれば) の垂れ流しを撤回する意思を示さないからです。

ほとんど政策効果のない子ども手当てをばら撒き、実行した結果農家の所得は上がるどころか米価を下げる効果しかなかった農業補助金、使わない人の税金で実現する高速道路無料化等々、効果や目的の定まらないばら撒きを撤回し、民主党案を示しさえすれば、議論にはいつでも参加します。

処方箋は出来ています。後は民主党が決断する事です。

 

今週の出来事「困った時のハリ頼み?

 

自民党大会で一番受けたのは岡野工業(株) 社長・岡野雅行さんのゲストスピーチでした。

岡野工業は従業員たった 5人の町工場ですが市場シェア 100%の『痛くない注射針』で世界的に有名です。70歳代のオヤジさんは「まだまだ 2つや 3つは新製品を世に送り出す」と意気軒昂でした。

『痛くない…』の次には…、そうだ!『怖くない選挙』っていうのを発明して貰おう!

「…却下!」