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先般、「模倣品・海賊版拡散防止条約」が日米欧の間で基本合意に至りました。1~2年以内に各国が国会承認手続きを終え、条約が発効する運びです。
7~8年前、自民党知的財産戦略本部長として私が提案をした国際条約が、ようやく実現する事になりました。
これまで、エネルギー政策基本法、コンテンツ促進法、映画盗撮防止法等、『チーム甘利』で作ってきた議員立法は多々ありますが、国際条約は初めての事です。恐らく、日本が提案した初めての国際条約になるのではないでしょうか。
当時、小泉総理に官邸で直談判し、直近のグレンイーグルズサミットでの議事に日本側提案として加えて欲しいと要請いたしました。
意義を説明すると小泉総理はその場で快諾をしてくれましたが、外務省は事前事務協議で内定している議題にこの案件を追加する事に極めて慎重で、もはや時間的に不可能と困惑していました。
そこで重ねて当時の藪中条約局長に電話で要請し、それでも埒が明かないと見るや、同期生の町村信孝外務大臣を督促し、ついに議事に入れる事に成功しました。
EU はすぐに理解を示しましたが、最初乗り気でなかったアメリカもやがてその必要性を認識し、最近では自分が提案したかのごとく前のめりになってきました。紆余曲折を経て先般基本合意に至りました。
国際経済に占める模倣品・海賊版の割合は真正品のおよそ 3倍の経済規模と言われ、その取引総額は年間 7~80兆円に及ぶと言われています。
その多くは中国で作られていますが、まがい物とはいえ雇用を支えている現実もあって、中国はこの条約に乗り気ではありません。
しかし、国際枠組みを広げていく事で、やがて中国も参加せざるを得ない状況になっていきますし、加入すれば偽物取引も取り締まらざるを得ない状況になります。日本は模倣品被害の第一人者ですが、ポケットモンスター 1つを取ってみても累計 7~8兆円の模倣品被害に遭っていると言われています。
「コピー製造・販売は野蛮国の証」という認識がこの条約を通じて世界中に拡がる日が来る事を願っています。
日本の経済成長戦略の中に、漫画・アニメ・映画・ゲーム・デザイン等、コンテンツを経済成長戦略の柱の一つにすると、現政権が私の時代の物を継承していますが、そのための国際的環境整備が大きく整ったと言えましょう。
私にとっても、恐らく日本にとっても初めての『日本発』の国際条約の誕生を素直に喜びたいと思います。
先週、日本・イタリアビジネスフォーラムのゲストスピーカーとしてイタリアを訪問した際、同時期に開催をされていたローマ国際映画祭にもゲストとして招待されました。そこでは、黒澤明監督作品が上映されており、オープニングセレモニーでは昭和25年作の「羅生門」が上映されていました。
「羅生門」は、カンヌ国際映画祭でグランプリを獲るや黒澤監督の代表作の一つになりました。世界中の映画監督が尊敬して止まない黒澤明氏の出世作になった作品です。
一方、別の会場ではコシノジュンコさんのファッションショーが行われ、大変な盛況でした。テーマは「和の美」で東洋的な美を西洋風にアレンジしたパフォーマンスでした。
アレマンノ・ローマ市長もお見えになり、私もしばし歓談させて頂きました。
エントランスを飾る創作華道は、今をときめく假屋崎省吾氏の作品で、新旧・日本のコンテンツがイタリア人の心を魅了した一日でした。