国会リポート 第199号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何がおきているのか解りやすく解説しています。

総 覧

菅政権の経済成長戦略が変な意味で、自民党内で話題になっています。

その中身といえば、かなりの部分が自民党政権時代に作った物の焼き直しでありますので、自民党に説明に来た各省の役人に対し「かなりの部分が俺たちの作った物だから…まぁ、文句を付ける筋合いじゃぁないんだけれども、サプライサイドには立たないといっている菅政権の成長戦略がサプライサイドの政策そのものなのは、どういう訳なの?」と説明を求め、役人はただ苦笑するばかり。

この読者の皆さんには、民主党政権の支離滅裂さと毎日向かい合わなければならない我々の辟易感はおよそ理解頂けないと思います。日ごろから主張している事と、政策として提言されていく事のつじつまがまったく合いません。そして、その合わない事に何の羞恥心も感じていないわけですから…。

宇宙人は、鳩山前総理だけかと思っていましたが、この政権は宇宙人だらけです。

麻生政権時代に緊急経済対策に盛り込んだ公共事業の中に、ミッシングリンク (ぶつ切りで繋がっていない主要環状線を接続させる公共事業) というのがありました。出来上がった後、経済効果が発揮される、いわゆる B/C (コストベネフィット = 費用対効果) の効率の高い事業ですが、事業仕分けの名の下に一刀両断にされたものが、景気対策として復活をしています。

そういえば、自民党政権下にレアメタル対策として計上された代替材料の研究開発の予算も、事業仕分けで無くされてしまったものが中国の事件が起こるや否や、こちらもまた復活をしています。一体、あの事業仕分けとは何だったんでしょうか?

無駄を省いた点があった事は評価しますが、金額を稼ぐために必要な物をメッタ切りにして、ほとぼりが冷めた頃そ~っと復活させるという実態をマスコミは報道しようとしませんし、事業仕分けの本当の姿を一体何人の国民が知らされているんでしょうか。

私が大臣時代、東アジアの経済成長を日本の成長に取り込むという遠大な戦略の下に設置した「ERIA (エリア=東アジア・ASEAN 経済研究センター)」は、ASEAN の経済戦略策定・提言・遂行に欠かせない存在として、初の日本発の国際機関としての認定を受けました。国連同様、外交特権を備えている国際機関です。ASEAN の経済開発に欠かせない、日本人が事務総長を務めるインフラになりました。

ASEAN のあらゆる会議に ASEAN 事務局と同列で参列する国際機関となったわけです。それにもかかわらず、民主党政権は事業仕分けでこの予算を 2割カットしました。一体全体、何が分かって、何を考えているのか。あきれて物が言えません。

また、これも私が大臣時代に ASEAN の高度人材を日本に呼び込む戦略として作った「アジア人材基金」も事業仕分けで全廃とされました。それで居ながら成長戦略の中にアジアの高度人材を日本に呼び込む項目が掲げられています。

かつて私がベトナムを訪問した際、日本の支援で出来たハノイ工科大学IT学科の学生 200人が私を出迎えてくれました。優秀なベトナムの超難関の技術系大学の更にトップレベルが目指す学科です。後半の年次には日本の大学への留学も組み込まれています。

そうした人材を卒業後、日本の研究機関や企業の研究機関に取り込むために経団連と連携したシステムを、大した検証もなく全廃してしまう事業仕分けとは益よりも罪の方が多いと思われる昨今です。

 

今週の出来事「ローマの休日?

 

10月 23日 (土) に、コ・フェスタ (ジャパン国際コンテンツフェスティバル) のフィナーレを飾る東京国際映画祭のオープニングセレモニーがあります。

六本木ヒルズ前の道路に敷かれたグリーンカーペットを、出演する俳優・女優や関係する有名人がアカデミー賞のように正装して歩きます。時の総理や経済産業大臣に声がかかりますが、私はコ・フェスタの創設者でありますので毎年招待を受けます。

今年も野党ではただ一人グリーンカーペットを歩く政治家ですが、一番イヤなのは有名女優の後、車から降りた途端、次は誰かと待ち構えていた観衆からため息が出る事です。『誰か有名人を道連れにしなきゃ』と、コシノジュンコさんに電話をかけました。

「僕と一緒に歩いてくれません?」

「ごめんなさい、その日は友人のところの結婚式にどうしても出なきゃいけないの。それより先生、ローマの国際映画祭に行かれるんでしょ?その時に私のファッションショーがあるから、レッドカーペットを一緒に歩きましょうよ!」

それは光栄なんですけれど、競争相手の映画祭を盛り上げる役もなぁ…。ちょんまげでも結って行こうかな?

「うちでは、やってません!!」 (カリスマ理容師)