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民主党代表選は菅直人総理の圧勝に終わりました。しかし、世論が 8:2 で菅氏を支持する中、小沢一郎氏が議員票で互角の戦いをした事は、党内に於ける小沢氏の影響力の大きさをうかがわせます。
菅総理周辺は『脱小沢』の腹を固めた人事を断行したようですが、副大臣・政務官人事で小沢派に最大配慮するという総理の発言は、どこか腰が引けている表れです。
検察審査会の結論が起訴相当と出た場合に、菅執行部が小沢氏に対してどういう対処をするかは一つの見どころです。代表代行就任を輿石参議院議員ともども固辞したのは菅執行部に対する徹底抗戦の意思表示とも受け取られますが、司法手続きが決着した後の小沢氏の対応が注目されます。
現状でも参議院で過半数に届かない民主党が、野党に加えて獅子身中の虫となりかねない小沢派を抱えどう国会を乗り切っていくのかは、政局の焦点となります。早ければ 10月 4日にも始まる臨時国会は、菅執行部の力量が試されます。
他方、自民党は先んじて執行部人事を刷新しました。党三役を全員 50代で揃え、初の女性三役も誕生いたしました。
我々から見れば相当インパクトのある布陣を敷いたつもりですが、マスコミ報道にほとんど注目されなかったのはタイミングの悪さだったと指摘されています。機先を制するつもりで行った先取り人事が、民主党代表選にかき消されてしまった感があります。
今後、政務調査会の部会長人事とシャドウキャビネット人事が行われますが、かねてからの私の主張通り、政調の部会長がシャドウキャビネットの大臣を兼務するという方向になった事は評価して良いと思います。
『シャドウキャビネット』とは我々が政権奪還をした際には、こういう内閣を編制しますという意思表示ですから、分かりやすい人事配置が重要です。
臨時国会で民主党政府は景気対策補正予算を組むと報じられていますが、「そもそも自民党時代より十兆円以上予算規模を大きくしながら、景気が低迷しているのはどういう訳だ」という質問をよく受けます。
リーマンショックを脱するための補正を行い、景気が巡航速度になった後にも史上最大の予算を組みながら景気が一向に回復しないのは、追加した支出がばら撒きで経済効果がないという事の証左です。
子ども手当てや農業戸別補償、高速道路無料化等のばら撒きを中止して、それらを景気回復・デフレ脱却のための景気対策に一点集中する決断が必要です。
デフレの原因は、直接的には供給力に対し需要が追いついていかない事、抜本的には労働力人口の減少と生産性向上の停滞により潜在成長力が落ちているという事が原因です。
ミッシングリンク (ぶつ切り状態の環状道路をつなげる事) を始めとする経済効果の高い公共事業や学校耐震化等やらなければならない公共事業の前倒しと、日本の産業競争力を高めるための投資、イノベーションを促進させるための税制等の環境整備を図り、あわせて外需の内需化のための FTA・EPA の促進、その前提となる農業構造改善の推進、それを邪魔している農業戸別所得保障を廃止し自民党時代の農業構造改善に舵を切りなおす事、新産業創造のための規制緩和を進める事、特に設計年次の古いライフサイエンス分野の規制改革を思い切って進める事、すなわちアンチビジネス・アンチ規制緩和の民主党の基本方針を転換する事が何よりも大切です。