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お蔭様で当初の予想を覆し、自民党が改選議席で第一党を占めました。国民のバランス感覚が働いた結果でありますが、まだ自民党に信頼が戻ったわけではありません。心して取り組んで行かなければなりません。
敗因を分析した民主党は、菅総理が唐突に消費税増税を言い出した事に原因があると総括していますが、果たしてそうでしょうか。投票日の出口調査でも、50数%が消費税増税はやむを得ないと答えておりましたし、直近の調査でも 6割の国民が消費税増税の必要性を容認しています。
問題は、増税の必要性の主張を野党に押し付けて責任逃れをしている姿勢を国民が鋭く見抜いたからではないでしょうか。何度も申し上げています通り、政権を取るという事はその瞬間から覚悟を決めるという事です。前政権の責任などという話を、半年経っても持ち出す政権など世界中にありません。
オバマ大統領は就任演説の中で「私は前政権の負の遺産も含めて背負っていかなければならない」と決意表明をしましたが、その後、前政権のせいだと言及した事はありません。都合の悪いことは事あるごとに前政権の責任などと言っているのは、世界広しと言えども日本の民主党しかありません。
自分が責任の当事者たる当事者意識を持つ事。1億2700万国民の命と生活を預かる責任者だという覚悟を決める事は、すなわち危機管理能力にもつながります。当事者意識を持っていれば、ぶざまな口蹄疫への対応の遅れも、荒唐無稽な普天間への対応も発生はしなかったはずです。
菅総理が消費税増税を決断しながら結局その責任から逃げ出そうとし、言い出したのは自民党だとか、顔色を見ながら非課税限度額をバナナの叩き売りのように年収200万だ300万だ、いや400万だと引き上げて行く姿勢が、覚悟の無さを国民に見抜かれたのだと思います。
世界一低い消費税 5%で世界一高い消費税 25%のスウェーデンと同じ福祉を実現していく事は不可能です。10%に引き上げる事は避けて通れませんが、その為には民主党の垂れ流し政策を止めてもらわなければなりません。
財源の当てのないマニフェストを撤回し、消費税を医療・介護・年金・子育てに限定する立法措置と併せて提案しない限り、与野党協議に乗ることはできません。垂れ流し政策の財源のために消費税を引き上げるような事をすれば、引き上げ幅は青天井になります。
喫緊の課題は景気回復ですが、ここでも菅政権は大いなる勘違いをしています。
私が閣僚の時に、月例経済報告の席上「日本は外需依存度が高いので内需拡大政策にシフトすると言うが、日本の外需の依存度はそれほど高いのか?」と質問した事があります。
実は日本は輸出依存度がドイツや韓国の 2分の1~3分の1で、先進国ではアメリカと並んで最も低い国なのです。人口減少で縮小していく内需に依存していく体質こそが経済成長を鈍化させるのです。
東アジア地域は21世紀の世界の成長センターと言われています。私が大臣当時、ASEANとの経済連携協定締結に奔走し、東アジアの経済研究所を日本主導でインドネシアに設置し、日系企業の収益を日本に還流させるための非課税措置を作り、日本の技術革新能力を高めるための産業革新機構を設立したのも、すべては世界の成長センター東アジアの成長力を日本に取り込む、つまり外需の内需化のための戦略だったのです。
経済のグランドデザインが描けないような政権に、日本の明日はありません。一刻も早く取り戻すために立ち上がらなければなりません。