国会リポート 臨時号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何がおきているのか解りやすく解説しています。

民主党マニフェストの問題点

  1. お金を配る政策は派手に書いてある (毎年17兆円) が、そのお金をどうやって生み出すかは要領を得ない。
    1. 節約して出す
      税収等は 50兆円余しかないのに、その中から毎年 17兆円をどう節約して生み出すのか書いていない。
    2. 埋蔵金から出す
      毎年継続的に出す事はできないし、それ以前にそんな額の埋蔵金はそもそも存在しない (外為会計の運用益は 1ドル 99円を切ると逆にマイナスになる)。
  2. 高齢化で社会保障支出の自然増は毎年 1兆円増加するが、人口減少 (2050年には 4千万人減) で消費も生産も減少し、このままでは経済規模は小さくなる。大きくなる社会保障負担を小さくなる経済で支えて行く事は不可能。人口減少下でも経済を大きくして行くシナリオがない。

 

 

個別の政策の問題点

  1. 高速道路無料化
    40兆円の高速道路建設の借入金は通行料収入で返済していく事になっているが、無料にすると高速道路を使わない人や車も免許証も持っていない人の税金も使って返済する事になる。
  2. ガソリン税半額化
    その収入源をどこでカバーするのか記載していない。
  3. 子供手当て月額 2.6万円支給 (総額5.3兆円)
    財源の一部に扶養控除と配偶者控除を廃止して充て、児童手当も廃止するので、2.6万円まるまる家計の負担が軽減されるわけではない。控除の廃止で多くの国民は逆に増税になる。また、併せて、企業も増税される可能性が高い。
  4. 最低保障年金を創設し、すべて消費税で支給する
    消費税すべてを支払いに充てても支給総額に足りず、また、消費税を財源としていた医療や介護等、他の社会保障の財源との関係をどうするのか不明。
  5. 農業戸別所得補償 1兆4千億円
    米 (コメ) の生産調整をやめ自由に作らせると言いつつ、国が生産目標を決め協力しない農家には所得補償をしない (意味不明)。この制度を米 (コメ)・麦・大豆・牛肉・牛乳・乳製品等に適用する。そもそも、この種の補助金自体、WTO 交渉上で削減対象となっており実行不可能。
  6. テロとの闘いを支援する為のインド洋沖での自衛隊による給油活動政策がブレまくる
    断固反対と法案を否決しておきながら (やむなく衆院三分の二で再可決)、政権を取った場合には「外交の継続性から当面は続ける」と表明し、その後、社民党から「それならば連立を再考する」と申し入れられた途端「やはり打ち切る」と再変更。

 

 

 

本当に必要な政策とは

  1. 年金・医療・介護・子育ての 4つの不安解消のため、現在の消費税をこの 4つだけに支出できる様に法制化する。
  2. それでも足りない財源の確保と雇用の不安を払拭するため、今までの成長戦略 (貿易立国) に代わる新国家経済戦略を策定し『人口減少下でも経済成長を可能とする』新たな経済モデルを創り上げる。