国会リポート 第172号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何がおきているのか解りやすく解説しています。

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自民党が歴史的大敗を喫しました。303議席から 119議席へ、3分の1近くに数を減らし野党に転落いたしました。

私自身も 1,940票足りず、小選挙区では敗退し、比例区での復活当選という屈辱の事態になりました。

確かに、政権交代への期待はうねりのように日本中を包みました。どの選挙区も自民党の候補者への反応はすこぶる良いにもかかわらず、支持率調査の数字を採れば劣勢になります。政権交代という四文字熟語が今回ほどサイレントマジョリティの心を捉えた事はかつてありません。

政権が交代すれば、何らかの変化が起きる。自分たちを取り巻く閉塞状況が打破されるのではないか。自民党に対する積もり積もった不満と局面打開への期待が一つになって政権交代という言葉に集約されました。かつてないくらいの運動量を誇りながら、わずかとはいえ至らなかったのは、どこに問題があったのか、しっかりと反省し、じっくりと考えたいと思っています。

麻生内閣の最大の使命が経済危機からの脱却であり、これに対する処方箋自体は適切であった事は国内外の経済機関の等しく評価するところであります。しかし、問題は国民の想いと自民党の想いとがすれ違ってしまっている事にもっと早くから我々が気付くべきだったという事です。

小選挙区制度という選挙制度は劇的に政権交代が起きるように設計されています。小選挙区で 1票でも足りなければ議席が与えられない訳ですから、カナダに於いては選挙前の与党が選挙後に 2議席になってしまったという象徴的な出来事もあったくらいです。惜敗率で復活をさせる比例制度は、それを若干緩和しているとはいえ、今回のような結果が起きるのは制度上の特性なのだと実感いたしました。

私が訴えてきた、(1)社会保障と子育てのために消費税をその目的税とする(2)更なる財源補完と雇用の安心と将来への夢の構築のために「新たな経済成長モデルの提案」をする、は十年経って振り返ってみれば歴史的提案と評価されると思っています。

『歴史が評価する政治家』私がいつも心に描いている理想像は、「選挙」という現実の前に虚しい気持ちにさいなまれます。しかしここで、気持ちが折れてしまったら大衆迎合政治しか残りません。気持ちを奮い立たせ私が思い描く理想の国日本の創造に向けて、一議員として、一から出直すつもりです。

 

今週の出来事「白紙投票も積極的な意思表示の一つ」

 

私の首班指名に臨む発言が波紋を呼んでいます。

麻生総理が責任を取って辞意表明し、次なる総裁候補を決める総裁選は (2009年 9月) 18日以降であるため、16日に予定されている首班指名には白票で臨むことも一つの選択であると発言しました。

しかし、同じ白紙投票でも私の趣旨は他の人とは少し異なります。

「無理に麻生を書けと言っても書かない人も居るから」とか、「まだ決まってないから」という理由よりも、「自民党は白紙、つまりゼロから出直します」という積極的意思表示として白紙投票をすべきであるというのが私の考え方です。