国会リポート 第134号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何がおきているのか解りやすく解説しています。

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1年 10ヶ月、676日間の閣僚在任を終えると、何とも言えない解放感と一抹の寂しさが入り混じった不思議な感覚にとらわれます。

内閣改造のあった翌週、かねてから予定されていた地方での講演を終え新幹線で新横浜に降り立ち、迎えに来た車へ行こうとしましたが道に迷ってしまいました。新横浜駅が改装されたという事もありますが、今までは先導されるままに、その後を着いていけばよかっただけに、何も考えずに歩いていたという事を思い知らされました。外国に行っても自分でパスポートを持つ事もなく、あまり長く閣僚をやっていると、終わった時に社会生活不適合になってしまいそうです。駅の出口が見つからないので迎えに来た秘書に電話をしようとしましたら、はたと秘書の名前が出て来ません。一瞬、認知症になってしまったのかと冷や汗が出ましたが程なく名前を思い出し、事なきを得ました。

在任中の記録を色々整理していた大臣秘書官室から、「甘利大臣は在任中、他国の元首 (国王や大統領) と、最も多く会った大臣」という報告をもらいました。経済産業大臣は、エネルギー・貿易・中小企業・知的財産・ODA そして産業政策全般と極めて所掌の広い大臣であります。その上経済大国日本の経済を担当する大臣であるだけに、他国にとっては大きな存在と映るのかもしれません。

資源国と資源交渉をする際、中国や韓国など、新興国との資源獲得争奪戦になりますが、戦後の荒廃から世界第二の経済大国へと導いた産業政策のノウハウを相手国に伝授するというセールストークは極めて大きな武器となりました。「よその国は『いかに高く資源を買うか』だけのオファーでしょう。わが国は資源がなくなった後の国づくりのお手伝いを、資源があるうちからする事ができますよ。」このトークは相手国の胸にしっかり届いています。

さて、日本のみならずアメリカや EU 等、先進国が景気後退の様を見せ始めました。経済成長と財政再建を同時に達成するという中長期のシナリオと、短期的な景気対策との整合性をつける事が求められています。戦後の発展は、人口増、資本増という拡大基調の中で借金を増やしながら成しえた成長であり、21世紀の成長は、人口減、資本減の中で借金を返しながら成さねばならない成長であります。いわば、パラダイムシフトの中で成長シナリオを描いていかなければなりません。中長期の構造改革ビジョンと短期の景気刺激策をシームレスに繋げ、国民と共にビジョンを共有しなければなりません。

83兆円の予算から、国債利払い費の 20兆円、社会保障費の 20兆円、地方交付税の 16兆円という当然経費を差し引けば残りは 20数兆円です。これで安全保障や外交や教育や農業や中小企業政策諸々全てを賄わなければならない事を考えると、民主党の主張するバラ撒き予算の原資は、いかに行革を行おうとも調達する事は不可能と言えます。

耳触りのよい政策には落とし穴がある事を有権者は見抜いているはずです。

 

今週の出来事「ゴールはいずこ?

 

党本部に寄りがてら麻生幹事長と15~6分、懇談をしてきました。

福田総理から政権禅譲の話があったのか興味深い所でしたが、そういう話はまったくなかったそうです。仮にそういう事態に至ったとしても、きちんと総裁選をやるべし、という考えで一致いたしました。

私は麻生シンパですが、巷間思われているような反福田ではありません。福田総理は偏見のない公正な人で、総裁選で一度も支持をしなかった私の意見にしっかりと耳を傾け、多大な評価もしてくれました。支え甲斐のある総理だという事は確かです。

先日、総理公邸で前閣僚が夕食に招待されましたが、総理はいたってご機嫌。我々のそばではワイン談義 (総理はカリフォルニアワイン派です) に花が咲きました。それにしても、冒頭の挨拶。

「とにかく行けるところまで頑張る!」とは意味深長な言葉ですねぇ。