総 覧
地方に足を伸ばされた方は、その異変に気付かれていると思いますが、あちこちの道路でその工事が中断したまま進んでおりません。工事中の立て看板に作業員も居らず、異様な風景が全国で発生しています。
ガソリンには 1 リッターあたり約 54 円の税金がかかっていますが、その約半分の 25 円は暫定税率分です。軽油も同等でありますが、それらによる 1 年間の税収は約 2 兆 6 千億になり、それはすべて道路およびその関連に支出をされています。2 兆 6 千億のうち 9 千億は地方に、さらに国から地方に交付される分まで含めると道路建設の相当部分が歳入欠陥を起こしております。
ガソリンに限らず、税金が安くなることは消費者としては歓迎すべきことでありましょうが、その税収によって施行される施策は止まってしまうことになります。都市にあっても、開かずの踏み切り対策はできないまま放置されています。行政の無駄を省くことは不断の努力ではありますが、いきなり 2 兆 6 千億を捻出することは不可能であり、赤字国債を発行する羽目になりかねません。日本の財政赤字は先進国の中で最も深刻な状態であり、利息払いだけで 20 兆円を計上しなければならない状態です。
そこで、小泉・安倍・福田内閣と三代続けて財政再建により赤字国債の発行を減額してきました。これが頓挫することは我々の子や孫の世代にさらに深刻なツケを回すことを意味しております。さすがに国民は賢明だと思うことは世論調査のたびに暫定税率は元に戻すべきだという意見が増え、直近の某紙の調査では戻さなくて良いとする人を戻すべきだという人が上回ったということです。
アメリカを除けば他の主要先進国ではガソリンにかかる税金は日本より高く、ガソリン価格はリッター 2 百円を超える国も出ています。ガソリンからの税金を道路の整備に使うということは納税者たるガソリン購入者との約束事でありますが、理解を得つつその税金の使途を、地方自治体を始めとする執行主体の自由裁量権に任せるという改革案を福田総理は提案いたしました。制度発足以来の改革案を野党がどう受け止めるか、野党自身も試されております。
先週、2 泊 4 日でイタリアにおいて開催された 70 カ国のエネルギー大臣が集まる、国際エネルギーフォーラムの第一セッションで基調講演をしてきました。現在の油価の高騰は異常であること、特に資源のない途上国は付いていけなくなりつつあること、世界経済の健全な発展なしに産油国だけが繁栄することはあり得ないということ、そのために上流・下流の更なる投資が必要であること、産油国も消費国も同じ船に乗っている運命共同体であること等を強調いたしました。
『産消両国は同じ船に乗る運命共同体』 という私の一文はその後も各国で引用され、今後とも供給不足は起こさせないという産油国側のコミットに繋がっていきました。