国会リポート 第111号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何がおきているのか解りやすく解説しています。

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「日本の電力会社って、どんどん不祥事が出てくるね」

議員仲間ですらこういう問いがあったくらいですから、一般の方にすればボロボロと出てくるデータ改ざん等に不信を募らせる方も多かったと思います。実は出てくるんではなく過去にさかのぼって徹底的に洗い出しをさせている、という事をご存知の方は意外と少ないようです。

私が経済産業大臣に就任して一ヶ月の間に、電力会社による過去のデータ改ざんが何件も内部告発されました。その多くは発電所の安全自身に直接影響を与える深刻なものではありませんでしたが、私が危機感を抱いたのは、小さな事を隠蔽する事によりやがて大きな事まで隠蔽せざるを得ない状況に追い込まれると、それが事故の原因になりかねない、という事でした。たとえ電力会社にとって都合の悪いデータが出たとしても、それを開示してその原因とそれによる影響を客観的に評価し、きちんと対応策が取れるようにする事が何よりも大事だと思いました。そこで、昨年 11 月 30 日、大臣名で全電力会社に過去のデータ改ざん隠蔽をすべて洗い出し、新しい体制を取る事を指示しました。

電力会社側はこの指示を真摯に受け止め、辞めた会社員まで含めて、延べ 7 万人の面接調査を行い、数十年前にさかのぼってデータ改ざん等がないか調べました。その姿勢自身は評価できるものでしたが、私の予想をはるかに上回って改ざん件数が多かった (300 案件以上) 事も残念でしたが、臨界 (ウラン燃料が連続的に反応をする運転状態になる事) にかかわる事故が 2 件隠蔽されていた事は極めて遺憾な事でありました。行政命令・行政指導に加え、厳重注意を行い再発防止体制の構築を指示いたしましたが、これを構築した後には世界一安全・安心な原子力発電所になります (現状でも安全性は世界一だと確信していますが)。

原子力はエネルギー安全保障と地球温暖化防止を両立できる唯一のエネルギーであり、いま世界中が原子力回帰をしている中だけに、関係者にはその自覚をさらに強くしてもらいたいと思います。

 

今週の出来事「初め良ければ全てよし?

 

シュルツ元米国務長官やピリッツァー賞受賞者のダニエル・ヤーギン、ノーベル賞学者のテッド・シュナイダー各氏をはじめ、欧米のそうそうたるメンバーの集まる会合で講演を頼まれました。

シュルツ国務長官からの講師紹介で最大級の褒め言葉を戴いたものですから、

「高名なシュルツ長官から過分なるお褒めを戴き、身に余る光栄です。講演して評価を下げるくらいなら、このまま帰っちゃった方がいいんじゃないかと思い始めました。」 (会場は爆笑)

「最初に言い訳をさせて戴きますが、この季節は私にとって最悪で、今日は花粉症で頭がボーっとしています。ですから、普通の人の絶好調のときくらいにしか頭が回っておりません」 (爆笑)

日本のエネルギー戦略と題する講演は大好評で、主催者から 「是非、今後も仲間としてこの会に参加して欲しい」 と持ち上げられたものですから、「シュルツ長官は明日、安倍総理と会われるそうですが、私が今後この会に来られるかどうかは、ひとえに長官がどのくらい私を総理にアピールして下さるかにかかっています」 (爆笑とやんやの喝采)

「カリフォルニアに来る機会があったら是非、私達の家へ寄ってくださいね。美味しいワインもありますから。」

シュルツ長官夫人の言葉もあながち外交辞令だけじゃなさそうでした。