国会リポート 第53号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何がおきているのか解りやすく解説しています。

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自民党神奈川県連会長に河野太郎君が内定いたしました。実は 1 年 3 か月前に私が就任する際、1 つの条件を提出しました。

というのは、従来国会議員が会長、県会議員が幹事長ということで両者が協力して運営していた自民党神奈川県連が、会長・幹事長を県議が独占するという特異な体制 (47 都道府県中 2 ~ 3 県のみ) が発生して以来、国会議員の県連無関心が横行し、両者間の隔絶した関係が構成されてくるにつれ、一種の危機感を持ち、本来の姿、つまり会長を国会議員に戻すことの必要性を説いて回りました。

それ故、会長を国会議員に戻すということが決まった際、あなたが責任を取って引き受けよという声が圧倒的多数になったために 「任期ごとに全ての国会議員が順繰りで責任を持つ」 ことを条件に会長に就任いたしました。

衆参両議院選挙を無事乗り切り、後任にバトンタッチを考えていた矢先、県連執行部から再任の強い要請を受けました。県連財政基盤の強化や次期知事選対策等々 「貴方でなければ出来ない課題に、きちっと道筋をつけて欲しい」 との再三再四の要請でありました。誰もなり手がないならそれも致し方ない、と覚悟を決めていた矢先に、河野太郎議員の立候補声明がありました。

これ幸いと不出馬表明しようとしたところ、県議団から猛然と抗議が来ました。河野太郎議員ではとてもまとまらないということで、何としても続けて欲しいという慰留でありました。正直、河野議員のパフォーマンスだけであっては困るとの思いもありましたので、何人かの議員を通じ彼の決意を確認してもらいました。

会長に就任するとなれば、パフォーマンスに終始することなく、泥をかぶるということも自ら進んでやる覚悟があるのかどうか、ということを正したわけですが、本人はその覚悟があるという返答でしたので、県議団にその旨伝えましたが了承されず、ならば県会議員から出すということになってしまいました。国会・県会両議員が協力して運営するはずの県連が対立構図を深めてしまっては、元も子もありません。

そもそも、県連会長ポストは総裁ポストと違って、選挙をしてまでやるようなポストではありません。政治権力闘争の主戦場である総裁ポストと、地域組織の取りまとめ役である会長ポストを混同してしまえば、果てしない対立構図の泥沼に陥ってしまいます。 「会長に就任することを通じて、河野議員があらゆる責任を自覚する必要に迫られ、それが政治家を育てることになればいいではないか」 と説得し、私の不出馬表明は最終的に執行部に了承されました。

新会長には 「上に立つ者は人の嫌がる仕事こそ自らが率先垂範する」 ということを習得し、人間として政治家として成長してくれることを切に望みます。

 

今週の出来事「異文化コミュニケーション

 

先般、将来の日本を担うと目されている友人の若手陶芸家、加藤高広氏 (30 歳) の個展に行きました。加藤氏は故加藤唐九郎名人のお孫さんで 「唐九郎の再来」 と関係者が早くから注目する陶芸家です。

「自分の思いを作品に表現するということは?」

との私の問いに、

「窯の中は火の神様の成せる業で、言わば大宇宙です。宇宙の摂理に自分の意志をどう押し込んでいくか、そこに絶妙な感覚が要求されます。意志が強過ぎると自然宇宙は捻じ曲がり、出来上がった作品は気分の悪いものになります。逆に意志が弱過ぎれば自己主張はなく、作品に何の味も面白さもありません」

年齢にかかわらず、その道の天才は含蓄のある言葉を発するものですね。