国会リポート 第49号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何がおきているのか解りやすく解説しています。

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民主党の岡田党首は 「民主党の力で新しい政治をつくり、政治を国民の手に取り戻す」 と抱負を述べていましたが、その実やっていることは、20 年前社会党が使った牛歩戦術。どこが新しいのかと耳を疑いたくなりますが、とても常識のある大人の対応とは思えません。おまけに年金法改正をめぐる参議院民主党の対応にいたっては、議会制民主主義を冒涜しているとしか思えません。

民主党の 「秘策」 によりますと、まず厚生労働委員長の不信任案を出し、長時間演説と牛歩で時間を稼ぎ、否決されてしまったら、次に議長の不信任案を出す。その際には議長席には民主党出身の副議長が座るので、議長席に座るや否や会の延期を宣言させ、また時間稼ぎをする。そうするうちに副議長の不信任案も出てくるので、その場合は事務総長が議長席に就く。その事務総長に今度は野党が不信任案を出す。すると次には議員の中の最長老が慣例として仮議長に座る。最年長者は社民党の田英夫議員なので、またそこで四の五の言って時間稼ぎ。そうこうしているうちに 16 日の会期末を迎える、という手はずでした。

ところが浅知恵は墓穴を掘るもので、初っ端の民主党出身の副議長が席に着くや否や 「散会」 を宣言し、事務局職員が止めるのを振り切って 「してやったり」 と意気揚々と議場を出たのはいいのですが、参議院規則第82条 「議長は議事の処理をせずに散会を宣言することはできない」 というのを知っていませんでした。

そこで散会宣言は無効になり、おまけに本会議場を出て行った手前、戻るに戻れず議論に参加すらできない状況で、憲政史上に汚点を残す大恥をかいて終わってしまいました。しかも党籍を離脱して中立であるはずの副議長が 「民主党に頼まれてやった」 と発言してしまい、今度は本岡副議長の責任問題に発展しそうです。

衆参の民主党の対応を見ていると、大人になりきれないまま議員バッジが付いてしまったという人が多く、政党の体をなしていない状況が散見されます。

他人ごとながら、日本の行く末を思うと、いささか心配になります。

 

今週の出来事「寅さんの心境

 

朝鮮総連の大会に小泉純一郎総裁のメッセージを託されて出席したことが、大分反響を呼んでいます。

大和警察署から 「警備体制を強化します。ご家族は家から出ないようにしてください」 と言われて、事務所一同キョトンとしていましたが、ほどなく右翼団体と思しき人から 「断固抗議をする」 という連絡を受け、ようやく事態を呑み込めたようです。

私の友人が北朝鮮脱北者の支援活動をしていることもあって、私も北朝鮮の非人道的対応に昔からクレームを付けてきた一人ですが、今度の件では北朝鮮シンパと勘違いをされたようです。

総裁自身のメッセージの内容も北朝鮮側に約束の履行を促すという主旨でありましたが、そもそも幹事長室というのは総裁の代行を行う役目でもあり、「男はつらいよ」 の心境です。