国会リポート 第44号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何がおきているのか解りやすく解説しています。

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3月 16日、今国会に提出する法案の受付が締切りになりました。政府が提出する法律案も、議員が提出する議員立法案も、自民党の党内審議手続きを経て国会に出されますが、通常、諸手続きが終わるタイムリミットは毎年 3月 15日とされています。

今国会は政府提出の法律案と条約案で 150本近くなり、これに議員立法案を合わせると 167案件となります。例年 100 ~ 120 案件ですから、今年は異常に数が多く、しかも参院選が 6月下旬に始まりますので会期延長はできない制約もあり、全案件を審議するのは至難の業です。

そこで中川国会対策委員長から議員立法提案者に対して 「全党一致案件以外は責任を持てません」 という通告がなされました。私も今国会に 「コンテンツ振興法」 という議員立法を提出しておりますので、中川委員長から 「甘利さん、何とか全会一致案件として提出できませんか」 という要請がありました。早速週明けに民主党の会合に出向いて法案の説明と理解を求める予定です。

167案件中、今国会の最重要案件は道路公団民営化法、年金改革法、裁判員法、有事法制後半部分、三位一体改革法、金融改革法などです。

民間人を裁判官として登用する裁判員制度は日本の裁判制度を根本から変える提案になります。アメリカでは国民の中から無差別に抽出された人が裁判官となって事件を裁く陪審員制度が定着しています。つまり全くの素人に犯罪を裁かせるわけです。

日本は司法試験を通った専門の裁判官が犯罪を裁きますが、とかく裁判官は専門馬鹿になりすぎて世間の常識を知らないと一部から指摘されてきました。法律の専門職の中に普通の国民を混ぜることによって世の中の常識を刑事裁判の世界に持ち込むと同時に、国民の 4つ目の義務 (納税・勤労・子弟を教育させる義務が憲法上の 3大義務です) として、言わば裁判員徴兵制のような仕組みを日本に導入しようというものです。裁判に市民の常識的感覚を取り入れ、政治に国民が参加するように裁判にも国民が直接参加して責任を分かち合うという趣旨から行われます。

地方裁判所の重大刑事事件のみに行われる制度ですが、素人が人を裁いてよいのかという意見も一部にあり、提出後も論議を巻き起こしそうです。

 

今週の出来事「メジャーデビュー?

 

先般、久しぶりに六人会が開かれました。六人会とは自民党が政権を失った 12年前、当時の竹下派の藤井孝男議員の呼びかけで各派閥の中堅が 1名ずつ選ばれて作った会です。

宏地会 (宮沢派) から谷垣禎一現財務大臣、清和会 (三塚派) から町村信孝元文部大臣、番町政策研究所 (海部派) から高村正彦元外務大臣、参議院から上杉光弘元自治大臣、そして政科研 (中曽根派) からは私が声を掛けられました。野党になってしまった自民党の求心力になろうということで設立され、今日まで毎年数回の持ち回り懇談会を重ねてきました。

今年最初の六人会は、地元の日程があったため遅れて行きましたが、車を降りたとたん 2台のカメラと大勢の記者に囲まれました。今まで六人会がカメラ取材をされたことはしばしばありましたが、これだけ盛大な出迎えを受けたのは初めてです。手には会場で飲むために持参したワインを抱えていて、きっと間抜けな映像になっていたと思います。

会場の 1階に六人会、2階に森前首相が別の会合をやっていたということが分かりましたので、それであんなに大勢来ていたのかと思いましたが、マスコミは森氏のことは知らず、やはり六人会の取材だったようです。

森氏は 1階の我々の席にも顔を出し、

「そうそうたるメンバーが揃っているな。総理をやる順番でも決めているのかね」

と軽口を叩いて、自分の会合に戻って行きました。

「いやぁ、六人会もメジャーになったなぁ」