国会リポート 第33号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何がおきているのか解りやすく解説しています。

総 覧

野中広務元幹事長が政界引退を表明しました。その本当の意味合いは本人しか知り得ないことですが、総裁選戦略としては良策とは言い難いところです。背水の陣を敷いたつもりが、結果的には自身の戦線離脱と捉えられ、ついていく若者にとっては今後の後ろ盾を失う戦いになるからです。野中氏は党内に残った最後の戦中派国士ですが、最近の言動がとかく情緒論に陥ってしまっているのは一体何があったのかと、いぶかしい限りです。

振り返って見れば、野中氏には随分と教えを請うことが多くありました。義に堅く、情に厚い政治家で、私も野中ファンの一人でした。自分に仕えた部下の育成に常に心を配り、見えないところで配慮をする思いやりは、山崎幹事長と相通ずる人情家です。前回の選挙での振り絞るような私への応援演説は、今も脳裏に焼き付いています。基本的な勘所を誤らない野中氏が、最近は個人攻撃や情緒的発言に終始するのは、何がそうせしめているのかと理解に苦しみます。私的な思いも含めて、ひとつの時代が終わりつつあるということでしょうか。

さて、マスコミの関心は総裁選後の人事に移っています。焦点は三役人事と竹中留任問題です。かねてより私は山崎幹事長と小泉総理の特殊な関係について述べてきました。官邸の意向を背負って党と向かい合うことができるただ一人の政治家であり、総理をかばって四方八方から飛んでくる矢に身をもって立ちはだかることのできるたった一人の人物であり、総理と差し向かい、言葉を交わさずともお互いの心情を理解できる唯一の関係にある人物として紹介してきました。

森前総理周辺は党内の声という理由で、何とか自ら勇退を、と幹事長に説いていますが、焦点は青木参院幹事長のスタンスです。小泉総理と山崎幹事長との特殊な関係を理解するなら、スムースな山崎再選となりますが、最後まで気を揉むことになるかもしれません。

竹中留任問題は、私はかねてから交代はあり得ないと説明してきました。小泉政策とは構造改革であり、具体的には 3 次にわたる 「骨太の方針」 であり、その基本設計者は竹中大臣そのものだからです。金融相の兼任は解かれることがあっても、経済担当大臣の職を解かれることはないでしょう。

 

今週の出来事「いつものこと

 

総裁選の始まった日、小泉選対本部に高村さんが出馬の挨拶に来ました。

「選挙中、総理に対して失礼な事を言うかもしれませんが、ご容赦下さい」

小泉総理は「うん、慣れてるから」だって。